意地悪な彼が指輪をくれる理由

秀士先輩の言葉は、ホールに流れる音楽に溶けて私の耳に入り込んで来た。

そして激しくかき回す。

「え?」

今日の秀士先輩は、やたらと私を揺さぶってくる。

わざとなのか、天性の魔性がそうさせているのか、判断がつかない。

「こんな時に、冗談やめてください」

私は何とか笑顔をこしらえる。

が、秀士先輩には通用しなかった。

「俺は本気だよ」

そんなことを言われても、素直に信じられない。

中学の時に好き好き言い続けたのが、今になって効いてきたとでもいうのか。

「私のこと、好き……なんですか?」

「さすが倉田。単刀直入だね」

だって言葉を選ぶ余裕なんて、今の私にはない。

「けど、だからこそハッキリ言うけど、好きだよ」

その言葉、14年前に聞きたかった。

次の瞬間、飛び込んで来た光景に、意識を全部持っていかれた。

秀士先輩の肩越しに、待ち焦がれた男が見えたのだ。

この一時間、まるで花占いのように「来る、来ない、来る、来ない……」と胸の中でぐるぐる悩み続けた答えが、今、出た。

「瑛士……!」

私を奪いに来てくれた——

しかし、そんな期待は脆くも一瞬で崩れ去る。

ホールの入り口に、瑛士に続いて、女医が現れたのだ。

< 200 / 225 >

この作品をシェア

pagetop