意地悪な彼が指輪をくれる理由
秀士先輩の言葉は、ホールに流れる音楽に溶けて私の耳に入り込んで来た。
そして激しくかき回す。
「え?」
今日の秀士先輩は、やたらと私を揺さぶってくる。
わざとなのか、天性の魔性がそうさせているのか、判断がつかない。
「こんな時に、冗談やめてください」
私は何とか笑顔をこしらえる。
が、秀士先輩には通用しなかった。
「俺は本気だよ」
そんなことを言われても、素直に信じられない。
中学の時に好き好き言い続けたのが、今になって効いてきたとでもいうのか。
「私のこと、好き……なんですか?」
「さすが倉田。単刀直入だね」
だって言葉を選ぶ余裕なんて、今の私にはない。
「けど、だからこそハッキリ言うけど、好きだよ」
その言葉、14年前に聞きたかった。
次の瞬間、飛び込んで来た光景に、意識を全部持っていかれた。
秀士先輩の肩越しに、待ち焦がれた男が見えたのだ。
この一時間、まるで花占いのように「来る、来ない、来る、来ない……」と胸の中でぐるぐる悩み続けた答えが、今、出た。
「瑛士……!」
私を奪いに来てくれた——
しかし、そんな期待は脆くも一瞬で崩れ去る。
ホールの入り口に、瑛士に続いて、女医が現れたのだ。