意地悪な彼が指輪をくれる理由
二人はボーイに案内され、こことは離れた席に案内されていった。
柱が邪魔して様子を窺うこともできない。
スーツ姿の瑛士は会社帰りだと思われる。
しかし女医は、このレストランの雰囲気にぴったり合うブルーのワンピースだった。
さすがはお嬢様。
悔しいけれどよく似合っている。
瑛士は私たちがここにいると知りながら、私を探すこともしなかった。
これが瑛士の答えということか。
「はははっ……」
笑う声が震えた。
私はてっきり瑛士は来ないと思っていた。
そこまでは覚悟を決めていた。
それがまさか女連れで現れるなんて。
想定外の展開に、悲しいを通り越して面白い。
さすがは私の相方だ。
いいセンスをしているよ。
姿が見えた一瞬でも、期待をした私がバカだった。
ぬか喜びはダメージが大きいのだと、先日学んだばかりだったのに。
「ふふふっ……」
ぽたり、白いクロスに雫が落ちた。
おかしいな。
私、笑ってるのに。
「倉田?」
笑ってるのに——……
「倉田!」
私は堪えられなくなって、ホールを飛び出した。
ふかふかの絨毯の上は、ヒールで走っても騒がしくならなくて、いい。