意地悪な彼が指輪をくれる理由
2515号室は横浜の夜景を贅沢に臨めるデラックスルームだった。
こんな部屋、テレビでしか見たことがない。
景色に圧倒された私は息を飲み、そのおかげで涙も止まる。
夜空に輝く星に似た小さな光の群。
その美しさはガラスケースでスポットライトを浴びる宝石たちに匹敵する。
「すごい……」
窓に触れるとヒヤリとして、外とここが隔てられていることを再認識した。
「落ち着いた?」
「はい。取り乱してしまってすみませんでした」
「いえいえ。想定内だったし」
秀士先輩はスーツのジャケットを脱ぎ、子供のようにベッドへとダイブした。
そしてすげーふかふかだとか何とか言いながら、彼なりにこの部屋を楽しんでいる。
しばらくして、部屋に料理が運ばれてきた。
私たちが食べそびれた肉料理とデザートだ。
「とりあえず、食おう」
「はい」
二人きりになった私たちは、マナーなどお構いなしでフレンチをつつく。
「うわっ。これ超うめーな!」
「ほんとですね。なにこのナス。付け合わせのくせに超ヤバい」
あの店では絶対に口に出せないようなセリフも、部屋の中なら遠慮なく言える。
余計に贅沢をしている気がした。