意地悪な彼が指輪をくれる理由
食事が終わったところで、秀士先輩が言った。
「腹が膨れたところで、またちょっとネタばらしをしようか」
「また、ネタばらしですか?」
「ああ。倉田は俺の予想以上に、鈍いみたいだからね」
先輩はテーブルから椅子を離し、リラックスした姿勢になった。
私はコーヒーを一口飲んで、逆に背筋を伸ばす。
「さっきも言ったけど、倉田のこと、好きになった」
穏やかだけど真剣な口調だった。
一生に一度でも彼の口からそのセリフを聞けるなんて、夢には見ていたけれど、思ってもみなかった。
「だから、先に謝っておこうと思うんだ。ごめん」
「どういう意味ですか?」
「今日ここに誘ったのは、あの二人を見せるためだった」
「……え?」
「つまり、俺は初めから、君を傷つけるつもりでここへ連れてきたんだ」
バカな私には、何を言っているのかよくわからない。
「好き」と「傷つける」が頭の中で上手に繋がってくれない。
好きなのであれば、できるだけ傷つけないようにするものじゃないの?
秀士先輩の表情が瑛士と似ていて、いつかのセリフが蘇る。
『真奈美。お前、危なっかしい奴だな。俺に簡単に騙された』
『初めからお前をここに連れ込むつもりだった。ずっと罠にかけてたんだよ』
すると、驚くほどにスッと理解できた。
私は性懲りもなく、馬鹿正直に秀士先輩の言葉を信じ、罠にかかってしまっていたのだ。
デートはそのための餌に過ぎなかった。