意地悪な彼が指輪をくれる理由

食事が終わったところで、秀士先輩が言った。

「腹が膨れたところで、またちょっとネタばらしをしようか」

「また、ネタばらしですか?」

「ああ。倉田は俺の予想以上に、鈍いみたいだからね」

先輩はテーブルから椅子を離し、リラックスした姿勢になった。

私はコーヒーを一口飲んで、逆に背筋を伸ばす。

「さっきも言ったけど、倉田のこと、好きになった」

穏やかだけど真剣な口調だった。

一生に一度でも彼の口からそのセリフを聞けるなんて、夢には見ていたけれど、思ってもみなかった。

「だから、先に謝っておこうと思うんだ。ごめん」

「どういう意味ですか?」

「今日ここに誘ったのは、あの二人を見せるためだった」

「……え?」

「つまり、俺は初めから、君を傷つけるつもりでここへ連れてきたんだ」

バカな私には、何を言っているのかよくわからない。

「好き」と「傷つける」が頭の中で上手に繋がってくれない。

好きなのであれば、できるだけ傷つけないようにするものじゃないの?

秀士先輩の表情が瑛士と似ていて、いつかのセリフが蘇る。

『真奈美。お前、危なっかしい奴だな。俺に簡単に騙された』

『初めからお前をここに連れ込むつもりだった。ずっと罠にかけてたんだよ』

すると、驚くほどにスッと理解できた。

私は性懲りもなく、馬鹿正直に秀士先輩の言葉を信じ、罠にかかってしまっていたのだ。

デートはそのための餌に過ぎなかった。

< 204 / 225 >

この作品をシェア

pagetop