意地悪な彼が指輪をくれる理由
「瑛士が今日女と過ごすことを、より強烈に印象づけたかった」
レストランに入るとき、あの支配人は秀士先輩の下の名前まで聞いていた。
同じ「大川」で複数予約が入っていたからだと、今更になって気付く。
もしその時に勘付いていたら、あんな気持ちにならずに済んだのかもしれない。
私はまんまと傷つき、瑛士に対して失望させられた。
「嘘をついたんですね……先輩、ひどい」
「卑怯だった。わかってるよ。それに関してはいくらでも責めてもらっていい」
責めたかったけれど、潔い彼の態度に萎縮する。
さすがはカリスマだった男だと感服するほか見つからない。
例え兄弟とて、優柔不断な瑛士には真似できないだろう。
「卑怯ついでに、またちょっとネタばらししようか」
「他にもあるんですか?」
「焼き鳥屋で会ったとき。倉田、俺と別れた後、瑛士の部屋に行こうとしてたんじゃない?」
「して……ました。あっ」
あの日、秀士先輩は私をきっちり相鉄線の改札まで送り届け、ホームに上るまで見送ってくれた。
そのため、私は瑛士の部屋へ向かうタイミングを失った。
まさかそれも罠だったなんて。