意地悪な彼が指輪をくれる理由
「ダメっ……!」
放られようとしたシュシュを全力で奪い返した。
信じられないほど必死だった。
右手で包み、その上に左手を重ね、ギュッと胸に押し付ける。
ああ、どうしてだろう。
この期に及んで心のどこかで、瑛士が来てくれると信じてる。
この部屋を知らないあいつが、来るわけないのに。
バカみたいで、また泣けてくる。
エレベーターが閉まる瞬間に聞こえた声。
瑛士が私の存在に気付いて追ってくれたのかもしれないと、期待せずにはいられない。
「そんなに、瑛士が好きなの?」
「そうみたい」
「報われないって、わかってても?」
「はい」
「女といるって、わかってても?」
「はい」
ラグジュアリーなホテルの、夜景の見える部屋。
目の前には恋い焦がれたイイ男。
女なら一度は憧れるこの環境よりも、ひとつのシュシュを手放したくない。
心も体も全て瑛士の方に向いている。
報われる可能性がどんなに低くても、ただ、瑛士を好きでいたい。
この気持ちはもう、自分の意思ではどうしようもないんだ。