意地悪な彼が指輪をくれる理由

「浮気されて、悲しかっただろ?」

「えっ……?」

突然優しい口調で、傷をえぐる。

これもきっと、瑛士の罠なんだ。

頭ではわかっているのに、浮気相手と鉢合わせてしまったときの気持ちは簡単によみがえってくる。

それに加えて、覆い被さる瑛士の顔が、信じられないほど艶かしい。

頭の中はもう、パニック状態だ。

「悔しかったんだろ?」

「そりゃ……そうだけど」

「俺も振られて、悲しかったよ。悔しかったよ」

私たち、似たような傷を抱えている。

そう思って胸がギュッと締め付けられた。

だけど、これもきっと瑛士の罠に違いない。

私はきっと彼の言葉に感情をコントロールされている。

わかっているのに抗えない。

「だからさ」

次に瑛士が言う言葉を、どうして期待しているんだろう。

「俺たち、寂しさを埋め合うのがベストだと思うよ」

さっき瑛士が舐めていたのはアイスじゃなかった。

ついたばかりの自分の傷と、生乾きのままの私の傷だった。

そして今瑛士が求めているのは、私も同じように彼の傷を舐めてあげること。

つまり、傷の舐め合いだ。

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