意地悪な彼が指輪をくれる理由

「倉田さんって、面白い方ですね」

「えっ……そうですか?」

「初めての一人営業で緊張してたんですけど、お話できてよかったです。店長同士はあんな感じですけど、仲良くしてくださいね」

ああ、なんて良い子なんだろう。

「もちろん!」

占いは微妙だった気がするけど、今日は良い日だな。

彼女とは良い友達になれそうだ。

モチベーションが上がった私は、お気に入りのネックレスがもっともっと輝くように、上の照明を磨いた。

「お疲れさまでぇ〜す」

夕方、鼻にかかる声で喋る19歳、野田ももこがやってきた。

今日も一時間かかるという巻き髪がキマっている。

「ももちゃん、お疲れさま」

「真奈美さん、何かご機嫌ですね」

「そう?」

ももこはショーケースを磨く私の顔をじろじろ見つめてきた。

上下つけまつげ越しの強い視線が痛い。

「真奈美さん、彼氏できましたぁ?」

「えっ? できてないよ」

「うそー。真奈美さん、そういうオーラ出てますよ?」

「どんなオーラよ、それ」

「それは上手く説明できないですけどぉ」

ももこは人のオーラのようなものを感じることができるらしい。

特に恋愛的な点に関してはよくわかるようで、私が別れたときも、

「真奈美さん、もしかして別れました?」

「あー、うん。オーラ出てた?」

「はい。ていうかそろそろかなって思ってましたぁ」

なんて言われしまったし。

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