意地悪な彼が指輪をくれる理由
その不思議な力が接客にかなり活かされているため、
「私早番無理ですぅ。だって髪巻くのに一時間以上かかるしぃ」
というワガママが通っている。
だから何の力もない私は早番ばかりなのだ。
先輩なのに……。
しょせんこの業界は実力主義。
より売れる人が優遇されるのは仕方がない。
ももこが言う「そういうオーラ」には、少しだけ心当たりがある。
彼女が私から感じ取っているのは、瑛士のことなのだろう。
と言っても、実際私たち、ただ酔っぱらって寂しくなってエッチしただけだし。
付き合ってないし。
あれ以来会ってもいないし。
「お疲れさまー」
私はこれ以上の詮索を避けるため、逃げるように店を去った。
6月も10日を過ぎると暑い。
そろそろ今年の夏物を見繕っておこうと、同じMビルの上階でショッピング。
あまり季節感の出ないジュエリーフロアに比べ、ファッションフロアの夏模様はすごい。
気に入っているショップをブラブラ見回っていると、バッグの中に入れていた携帯が震え出した。
ディスプレイを見た瞬間、私はその場で足を止め、立ち尽くす。
「山口耀太(やまぐちようた)」
4月に浮気が発覚し修羅場の末に別れた、元彼の名前だった。