意地悪な彼が指輪をくれる理由

ふつふつと沸き上がるストレスにまみれた感情。

たぶんこれは怒りではない。

どっちかっていうと、呆れだ。

こんな男と、少しでも将来を夢見てしまった自分が情けない。

私は入っていたショップから出て、エスカレーター横の空いたスペースへ。

ここなら声もよく聞こえる。

「でさ。俺、婚約指輪買いたいんだけど。真奈美、そういうの扱ってるだろ」

「そりゃあ扱ってるけど……」

だからって元カノから買うか? 普通。

耀太はそこそこカッコ良くて、いつも笑顔で、優しかった。

優しいけれど、それは表面だけで、きっとどこまでも自分勝手で酷い男なんだと思う。

私は彼の部屋で女と鉢合わせしてしまうまで、それを見抜けなかった。

「じゃあさ、オススメのやつ、準備しといてよ。9号」

「ちょ……! 見て決めないの?」

「急に結婚が決まって忙しいんだ。前に言ってたよな、絶対にこれってやつがあるって」

「あるけど……」

でも、それ、奥さんは一生大事にするんだよ?

見もしないで決めちゃうの?

「真奈美が選んだやつなら、間違いないと思うからさ」

なんて男だ、こいつは。

どういう神経してるのよ。

瑛士と同じ台詞だけど、わけがちがう。

「ねぇ、彼女との結婚を決意した決め手は?」

耀太は急に決まったって言った。

もしかして……。

頭によぎった、最悪の答え。

いくらなんでも、まさかね。

「ああ、子供ができてさ。もう4ヶ月なんだって」

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