好きと言えるまで
「‥遅くなっちゃったね」
ごめんね、といわんばかりにそう言うのだけれども、先程からちょっと不機嫌なのかなんなのか返事が帰ってこない。
家まで案内するのを忘れてたのが気に入らなかったのか。
二、三歩後ろを歩く一宮くんに私は振り返った。
「ねぇ、何でさっきから黙ってんのよ」
「‥‥‥」
「ねぇ、気まずいじゃない」
「いつもあんなんなのか?」
「!へっ!?」
「いつも変なのに絡まれてんのかよ」
先程の事を言われているのだと気付き、思わず、歩くペースが遅くなる。
「‥今日のがたまたま変な奴だっただけ、いつもなら私負けないもん」
「負けない?」
不思議に聞いてきた一宮くんへ私は力こぶを見せた。
「私、これでも武道やってるの」
「武道?格闘とかのか?」
「そう、空手とかいろいろ」
母親が亡くなってからというものの、父親の笑顔は減った。
それは小さかった私でも分かってしまうほどで、それを見て思ったのだ。
母親はスポーツが好きだった。
そして武道や、空手、少林寺などさまざま格闘が好きだった。
小さかったつ私には母親の真似をしてお父さんを元気付けようとおもったのかもしれない。
おかあさんは、ここに生きてるよ。
と、私が家族を守ろうって決めたのはこの頃だった。
気がつけば、父親の為だけでなく家族のため地域の為に武道の道を進んでいる。
学校ではスポーツの大会や、部活の助っ人で引っ張りダコだ。
「‥‥それにしてはさっきは随分あっさりと負けてたじゃねぇか」
思わずカチンと、頭に血が上る。
「き、今日はたまたまよ!、てゆうか何であんなところに居たの?」