もっと傷つけばいい
エレベーターで3階に降りると、あたしたちはベトナム料理店に入った。

「うまいだろ?」

フォーをすするあたしに、ソウが生春巻きを食べながら聞いてきた。

「うん、美味しい」

あたしは首を縦に振ってうなずいて答えた後、生春巻きに向かって手を伸ばした。

同時に、あたしは彼に聞きたかったことを思い出した。

「ねえ、ソウ」

「んっ?」

声をかけたあたしに、ソウは口の中の生春巻きをゴクンと飲み込んだ。
< 103 / 140 >

この作品をシェア

pagetop