もっと傷つけばいい
ソウがあたしに視線を向けてきたのと同時に、あたしは首を縦に振ってうなずいた。

「――うん…知らないよ、こんな人」

あたしは、ちゃんと言えただろうか?

あたしの言葉に、彼女は驚いたと言うように震えた。

ああ、ちゃんと言えたみたいだ。

ホッと胸をなで下ろしたあたしに、
「じゃあ、僕らはこれで失礼する」

ソウがあたしの手を引いた。

「――あ…」

そのままあたしたちは、震えている彼女の横を通り過ぎた。

「ナギ」

「何?」

ソウがあたしに話しかけてきた。
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