実は、彼女はご主人様でした。
「そこのソファで偉そうにメタボな体を沈ませて座っているのが私の父だ。3か月前に事業縮小によるリストラ候補に上がり、足掻くことなくサッサと会社を辞め、満額入った退職金を湯水の様に夜の街使い、今は、もうすぐ失業保険が切れる立派なモラパラだ」



聞き間違いだろうか、立派に紹介はしているが、内容は褒められるものではない。


それよりも、桜雪が言っていたことが本当なら、今のんびりしているこの状況が客観的に見て怖くて仕方がない。



「……あの、モラパラって…」

「あぁ、別に私が勝手に言っているだけだ。ニートは34歳くらいまでの若者のことだろう。父はその年齢をかなり超えている。そして今じゃ、就職活動もせずに失業保険と、母の微かなパート代を充てに暮らしているモラルに欠けた完璧なパラサイトだ。私もそろそろバイトしようかと思っているところだったりする」



戸惑いなく話す桜雪の言葉には気持ちが感じられないためか、真人には作られた話のように聞こえる。だが、嘘だとは思えない。


桜雪の紹介内容は父親本人の耳にも当然入っているはずなのに、軽く振り向き、会釈されただけで、手に持っていた新聞へ視線を戻した。


普通なら激怒する内容であるはずなのに、この無反応は何なのだろう。


問いかけようとすると、桜雪は真人の行動を無視して母親の紹介に移った。
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