実は、彼女はご主人様でした。
「いつもと同じだな」



桜雪に告白する男子生徒は多い。

けれど、皆、同じように丁寧なお辞儀を受け、断られている。今まで目撃してきた限り、イケメン率はかなり高かったはず。それに、申し分のない頭脳を持っている人もいた。

なのに、桜雪は誰一人とも付き合うことはなかった。



もしかして…。

 

そう噂されてもおかしくない。と、言うよりも怪しまれているのは確かだろう。



「じゃ、俺って…告白する前から希望なしってことか…」



今までチャンスを待っていた分、テンションが下がる。ため息混じりの苦笑いをしながら、真人は桜雪を目で追っていた。男子生徒の姿が見えなくなると、桜雪は突然上を向き、真人のいる場所へと視線を移した。


突然合わされた視線。


思わず真人は大きく脈打った胸を押さえた。


そして、桜雪はイタズラな笑顔を向けると「内緒」と言うように人差し指を口元に持って行った。
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