実は、彼女はご主人様でした。
机や椅子が倒れ、床に転がる。
もう力加減の容赦はなかった。


咄嗟に受け身になっていた桜雪は頭を打つことは避けられたものの、代わりに肩に衝撃を受け、鈍い痛みが神経を支配し、頭の中には痛みの感情ばかりが巡っていた。

声を出すこともできず、大きく呼吸をしたいはずなのに、それすらできない状況で、桜雪は肩を押さえ必死に耐えている。

真人は桜雪の様子に焦り、先生に掴みかかろうとするが、物凄い勢いで撥ね退けられた。


それだけ心の隙をついてしまったのかもしれない。


しかし、チャンスはあったはずなのに、なぜ桜雪は先生の黒い部分を取ろうとしないのか。



「桜雪、なぜ取らない?」

「……っ…まだ、だから」

「え?」

「まだ、先生はこの既視感の中において、心の中にある本当の願望が分からない」

「え…願望…」



何とか隙を見つけ、塞がれつつも桜雪は真人の質問に答えた。
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