黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~

 市橋駅のロータリーにできた日陰に、徐々に強くなる陽射しを避けて並んで座る。
 目の前を行き交うサラリーマンやOL、クラブ活動や補習に向かう学生が通る。有名なお嬢様学校の生徒とヨレヨレのジャージ姿の俺は、一体どんな風に写っているのだろう。
 チラチラと向けられる男の視線は、大半が嫉妬に満ちている。実際は初対面で、しかも悪霊の見分け方を聞いているだけなんだけどね。

「雅治は、そもそも悪霊が何なのか知ってる?」

 見栄を張る必要もない俺は、素直に首を横に振る。

「知らない」
「やっぱ、そこからかあ。あのさ、霊って大きく分けると浮遊霊と地縛霊になるの。聞いたことくらいあるんじゃない?」

 心霊番組などほとんど見ないが、そのくらいは聞いた事がある。 頷く俺を見て、瑠衣が話しを続ける。

「浮遊霊ってのは、そこらじゅうでフワフワ漂ってるヤツ。地縛霊ってのは強い因縁に縛られ、ある一定の場所から離れないヤツ。仮に一定時間離れたとしても、その場所に帰ってくる。
基本的に悪霊は、地縛霊なのよ」
「で、見分け方は?」
「あそこ」
「あそこ?」

 瑠衣が指を差した方向を見ると、駅の改札を凝視している白い人影があった。

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