不機嫌な果実
「気晴らし、気晴らし」

そう言って、また凌也はまた歩き出した。

「でもだからって、制服でどこ行く気?

変な目で見られるじゃん」


私の言葉に、凌也は笑いながら言った。

「どっかで服買えばいいじゃねえか」

「?!…今日はそんなに持ち合わせないし」

…学校に行く気だったから、千円も持っていなかった。



「オレは持ってる」

「?!」

目を見開く私、こちらにちょっと振り返った凌也は、

ニコッと笑うと、どんどん駅に向かって歩いていく。

…言い出したら聞かないのは、昔と全然変わっていないようだ。


…でも、服を買うにも、まだ出勤・登校時間。

お店なんて、どこも開いてるわけもなく。


ジロジロと見られながら、

開店まで、その辺をうろついていた。


・・・午前10時。

やっと開店時間がやってきた。

「行くぞ」

「・・・うん」

尻込みする私を、凌也は気にせず引っ張った。


「お前は、これとこれ、会計は済ませとく」

「やっぱ、悪いよ」

「たかがバイト代だ、気にすんな。

こう見えて金持ちだし、オレ」

そう言ってにんまり笑った、…この笑い方をする時の凌也は、

全部おれに任せとけって言ってる時。

…年下のくせに。
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