不機嫌な果実
その声に驚き振り返れば、そこには桃子の両親が。

頬を染め、ニヤニヤ笑いながらこちらを見る桃子ママ。

片や、笑顔を引きつらせ、拳を握りしめる桃子パパ。


「人んちで何してやがる、凌也!」

桃子パパの怒声が飛ぶ。

オレは下をペロッと出して、桃子の頭にサッと手を当て、

退散した。


「お邪魔しました」

「ふふ、またおいで~」

オレの言葉に、呑気な返事をする桃子ママ。


「もう、来るんじゃない!」

と、ご立腹な、桃子パパ。


・・・桃子はと言うと、

顔をたこのように真っ赤に染め、

それでも、小さくオレに手を振って、ほんの少しだけ笑った。


・・・ったく、そんな顔まで可愛い。

桃子は、きっと生まれながらの子悪魔だ。
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