「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」


5階に戻って、何事もなかったように午前の排泄介助に合流した。心はレイニーブルーだったけど。

車椅子を押してトイレに向かう途中の浩平が私に気付き、「おかえり」と、眩しい笑顔を向ける。


うん、とだけ返して、

「あと、誰、行けばいいですか?」

と尋ねた。


私の余所余所しい物言いに、何かを察したらしい浩平は一瞬だけ不思議そうな顔を見せるも、

「ああ、じゃあ……月野さん、頼むわ」

すぐにいつも通り的確な指示をくれる。


月野さんは80過ぎのお爺ちゃんで、女性職員へのボディタッチが激しい。まあ、そういうのも生きる原動力なんだろうけど。月野さんの場合、エロ行為の頻度が元気のバロメーターなわけだけども。

ターゲットにされる若い女性職員は、たまったもんじゃない。二十歳そこそこの女の子が目に涙を溜めて唇を噛み締める姿を、私も何度か目撃している。


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