マー君(原作)
今度はなんとかかわすことができた。洋太は横に避け、背後にあった背の高い木製のテーブルに倒れこんだ。

「な、なんで俺を、殺そうとするんです? 俺は何も−−」

説得しようと試みたが、雨の母親の次の手は早かった。

体制を崩した洋太に逃げる間を与えず、包丁を突き付けた。

「ふふふ、よけないでくださいよ。ねぇ!」

その突進は真っ直ぐ洋太を捕らえていた。洋太はとっさに手前にあった椅子を取り、雨の母親の攻撃を防いだ。

包丁は椅子の背もたれの部分に刺さり、洋太には届かなかった。

「や、やめて、ください! こんなこと、俺が邪魔なら、出ていきますから! だから、こんなこと−−」

「黙れ! 黙れ、黙れ、黙れ!」

雨の母親が息を切らしながら、肩を揺らす。刺さった包丁を椅子から引きはがし、また構える。

「お前は私達の邪魔をした。だから、殺す、殺す、殺す、殺すっ!

マー君がお前が死ぬことを望んでいるなら、私達はお前を殺す」
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