マー君(原作)
後ろには、少年が立っていた。小学低学年ぐらいの少年が。

青い帽子を被った、ラフな格好をした彼は、じっと雨を見つめていた。

日を存分に浴びている雨をしっかり見ていた。

「な、なんだ、君どうしたの? こんな時間に」

雨は動揺しつつも腰を曲げて、少年に優しく話しかけた。少年は照れ臭そうに俯いて、帽子で顔を隠した。

「何、照れ屋さんなのかな?」

「・・・・・・別に」

どうやら消極的な子供のようだ。雨はさっきの言葉を聞き返した。

「さっき、私にマー君に勝てるかって聞いたわよね? 君は勝てないと思うの?」

「たぶんね」

少年は顔を逸らしぶっきらぼうに言う。

「だって、あいつは−−マー君は」

悔しそうに両手に力を込める。雨はそんな少年をじっと見つめていたが、ふと思いついたように言う。

「君−−名前はなんて言うの?」

「名前?」

「そう名前よ」

少年は戸惑っているようだったが、しばらくすると躊躇いながらも名乗った。

「僕は鳴海凪」
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