マー君(原作)
大切な物−−。

お姉ちゃんにとって大切な物。僕にとって大切な物。皆にとって大切な物。

「だから、私達黒の仮面は、マー君に勝つそういう意味じゃあなくて」

雨は凪に体を向け、笑みを消した。覚悟を決めた表情をして、目を大きく見開いた。

「マー君から奪われた大切な物を取り返す−−それが私達の存在意義なの。だから、凪」

また凪の両親に顔を向ける。

「希望を持って。奇跡を信じるのよ。ご両親は今は助けられないけど、希望を持てばその時は必ずくるわ」

希望を持つ。

凪はいつの間にか濡れていた目を腕で拭い、こっちを見ている雨に聞いた。

「僕でも、僕でも希望を持てるかな?」

雨はにこりと微笑み答えた。

「凪は強い子でしょ? だったら、持てるよ。希望を−−」

凪は瞳の奥が熱くなるのを感じた。気付けば泣きながら雨の胸に抱き着いていた。今まで我慢していた感情がどっと溢れ出てきた。止めることなんてできなかった。

悔しい、悔しい、悔しい!

自分の無力さに怒りを感じながら、ひたすら泣いた。ひたすら−−。

「父さん、母さん、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

雨が辛そうに凪を見下ろしながら、その小さな頭を何度も撫でた。それでも凪の泣き声は止まらなかった。
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