マー君(原作)
その瞬間、春香は顔を上げ、辺りを見回した。

まだ電車は駅についておらず、一定のリズムを刻んで走行している。

その揺れの中、電車に乗っている者を探したが、目の前に座る髪の長い気味の悪い女以外姿が見えなかった。

春香はその女を凝視した。

まさか、この女がマー君? 

いや、待て、本当にそうなのか? 

春香は現実と仮想の世界の区別がつかなくなっていた。

マー君が近くにいると言ったが、それはこっちの世界? 

あっちの世界?

どっち?

悩んでいる間に、マー君がどんどん近づいてくる。

と、マー君からまた書き込みがあった。


マー君>今君を見てるけど、カワイイね。僕の新しい体にぴったりだ。


何? 

新しい体? 

見られている? 

春香は急に気味が悪くなり、目の前にいる女から離れようと立ち上がった。

その時だ。

隣の車両から誰からこっちの方へ近づいてきた。

手動ドアがすーと開き、それはやってきた。

それを見た途端、立ち上がった春香は腰を抜かした。

近くにいた髪の長い女はひひぃ! と悲鳴をあげどこかへ逃げてしまった。

「やぁ、春香、僕がマー君だよ。といってもこの体は十二人目だけどね」

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