マー君(原作)
<2>

「で、ここの二次方程式はこうで、解答に至るまでにxを――」

2年B組では、数学の若い男教師――高橋が黒板に長い数式を書いている。

長い黒髪が女のように見せ、後ろで一つに纏めている。

黒いスーツをきっちり着こなし清潔感溢れており、学校でもなかなか人気がある教師で、生徒には優しい。

それを知っている生徒達は、授業中というのに、高橋の目を盗んではひそひそ話をしたり、ノートの切れ端に書かれた手紙を飛ばしあっている。

もともと雫の通う中学校は、あまり評判がよくなく、不良がいるぐらいだ。

これぐらいは当たり前である。

最近の生徒達の関心事は、マー君というネット伝説である。

そのネット伝説とはほとんどにマー君というネット上の殺人鬼が関わっており、この件に関わった者がことごとく行方不明、死亡している。

狭い教室には男女三十名弱がおり、教卓から一番後ろの席に雫、その左窓側に綾が座っている。

綾は机の上で教科書を立て、その陰で携帯電話を開いている。

雫同様長い黒髪が開いた窓から入る風で微かに揺れている。

小さな顔は高橋が書く黒板ではなく、携帯電話に向かっている。
< 94 / 604 >

この作品をシェア

pagetop