マー君(原作)
「どうした、竹村?」

異変に気づいた高橋が、立って皆を睨んでいる生徒を呼んだ。

竹村と呼ばれた生徒は高橋の言葉を無視して、一歩また一歩と皆の方へ歩いていく。

その歩き方は普通ではなかった。

まるで何かにとりつかれているかのように、ぎこちない。

皆も竹村の異変を察してか、会話を止め、警戒する。

そんな竹村を高橋が止めに入った。

彼の腕を掴み、席に座らせようとする。

「おい、まだ授業――」

「放せえええええー!」

突然、竹村が怒鳴った。

高橋の手を勢いよく振り払って。

その光景に、教室は静まり返っていた。

さっきまでの雑音が嘘のように消えていた。

日差しを防ぐために閉めきっていた薄茶色のカーテンだけが、風に揺らされざわめいている。

竹村の顔は笑っていなかった。

さっきまで横に広がっていた口は消えていた。

皆黙り込んで竹村を凝視する。

雫も同じように竹村を見ていた。

こんなことは一度もなかった。

彼はもともと大人しい性格で、授業を真面目に聞くタイプだ。

そんな彼がこんな行動を取るとは――。

持っていた携帯が微かに振動していたが、そのままにしていた。
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