淡い初恋
そんなある日、一人で近所を散策していた時のこと突然「そこのお嬢さん」と声をかけられて振り返った。見ると閉ざされた門の前で黒いベールを纏った怪しげな女性の方が私に話を掛けてきた。「そう!そこのお嬢さん!あなたです。」と言って私の方を見てしきりに手招いてくる。お嬢さんと言ってくる割には顔を見る限りだと絶対私の方が年上である感じがしたが、気にせず彼女に近づくと彼女の前に置かれたテーブルの端には「藤森占いの館」と書かれた紙が垂れ下がっていた。

「占いの館?」と聞き返すと「はい!この門を通って少し歩いたところに怪しげな館があり、その中で商いをしているのですが誰も来ないのでここで呼び込みを行なっているのです。」と言ってきた。自分で『怪しげな館』と言ってる位だからまず誰も近寄らないだろう。と、心の中でツッコミを入れると「あなた、想い人がいますね?」と突然聞かれ、私は虚を突かれた。

「え?」「ふむふむ、なかなかの・・・いやかなりのイケメンですね。」と私の目ではなく、その奥の何かを覗きこんでるような表情をすると「近いうちに再会出来ますよ。」と言ってきた。「え!?うそ!?」と声を出すと「しかも、両思いです。再び縁が結ばれるでしょう。」と彼女は言い切ると一歩後ろに下がった。

「あ、あのお金いらないですよ!勝手に見たんで。良かったですね、ハッピーエンドになって。」と言ってきたので「あ、いや、その。」と訳が分からず口ごもった。
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