淡い初恋
龍くんが去った後、私は悟った。

何もかもが遅すぎた。

かつて彼と見た純愛映画のように、何も言わなくても
お互い心が通じていて、すれ違っても元に戻って、
言葉にしなくても相手が分かってくれると信じていた。

だけど、現実は違った。言わなきゃ相手に伝わらない。
相手にも同じ苦しみを与えようと邪念を抱いて相手を試すようなことして
結果、自分の大切な人を失った。荘子のように・・・。

私は、そのまま泣きながら床の上で横になると目をつむった。
次第に眠気が襲い、私は幸せだった時の二人の夢を見た。

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彼の方を見上げると「記念写真欲しかったんだよな。」とニカっと可愛い笑顔で言ってきたので私は思わず「早く言ってよ!変な顔しちゃったじゃん!」と彼の肩をポカポカ叩いた。

彼はその手を制すると「希、好きだよ。」とつぶやいた。彼の甘い声に私は動作を止め思考が停止した。龍くんの端正で美しい、真剣な顔が目に入った。私の心臓がドクンと一瞬跳ね上がると「私も龍くんのことがすごくすごく好き!」と言った。

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龍くんは私を抱きしめると「希!俺が就職して立派な大人になったら結婚しよう!」と言った。私は、彼のセリフに嬉しくて涙を流すと「うん!もちろん!」と応えた。そして二人は見つめ合うとお互いキスをした。

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龍くん、憶えてる?

悲しくも美しい 叶わなかった私たちの初恋を・・・
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