淡い初恋
行為が終わり、私がブラウスのボタンを留めている時に彼が部屋を出ようとしているのが目に入った。ちょっと待って!私は彼の腕にしがみついた。「な、なんで?もっとゆっくりしていけば?」と寂しい気持ちを誤魔化すように軽い感じで彼を引き止めた。彼は、流し目で私を見るとベッドの上に腰掛けた。私は胸を撫で下ろすと「今、家政婦に茶を出すように頼んでくるから。」と言って彼を部屋に残すと私はリビングに向かった。

数十分して私は彼と向かい合いながら紅茶を嗜んだ。「私達ってお似合いじゃない?秀才同士、美男美女同士。なんか時々、周りが低レベル過ぎて付いていけないんだよね~。」と言うと彼は、フッ笑い、紅茶をテーブルに置いた。すると彼の顔が目の前まで近づいてきて思わず、ドキッとした。まさか、キス・・・と思った瞬間、耳元で囁かれた。

「俺、お前のそうゆう傲慢なところが前から嫌いなんだよな。」と闇の底から聞こえてくるような低い声で。

「え?」私は努めて明るく聞き返すと彼は、立ち上がった。「確かにお前は俺の体を手に入れた。だけど、俺の心までは手に入れられると思うなよ。」そう言うと彼は、扉を開け部屋を出て行ってしまった。

一人部屋に取り残された私は、唇を噛んでその悔しさや悲しみを必死に抑えた。
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