オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
 
今はだいたい、お昼の12時。

ディナーの時間は夜7時からだから、ホテルまでの移動に数十分かかるとしても、丸々6時間弱をトトーレで過ごす、ということになる。

ここで時間を潰すあたしたちも、かなり疲労困ぱいするだろうけれど、店員さんだって、6時間も居座られては、はなはだ迷惑だ。

ああ、あたし、なにとんでもないことを口走っちゃったのだろう、6時間って、普通に夜の睡眠時間くらいの長さだよ……。


「ねえ、まことちゃん」


そうして1人で青ざめていると、壁に円を描くのをやめたらしい先輩がこちらを向いた。

心なしか、顔に元気が戻っている。


「なんですか」

「このコーヒー飲んだらさ、やっぱり街をブラブラしない? 俺、はしゃぎたい衝動を頑張って抑えるし、まことちゃんの隣でも、なるべく平常心を保つようにしてみるから。トトーレで夜までは、さすがにキツいよ、俺……」

「そ、そうですね」

「うん」


そうして、コーヒーを飲み終わると、先輩とあたしは、さっそくイブの街に繰り出した。

トトーレに入るまでの異様なハイテンションを本当に戒めた先輩は、それからは、魔法店を探すことも、変な歌を歌うこともなく、ごくごく普通にあたしの隣を歩いている。
 
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