オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
 
「ええ。野宮さんに車で送ってもらって、ですよね。野宮さん、迷いませんでした?」

「……、……。……ふざけているの?」

「ごめんなさい」


メルさんがあまりにも威圧感たっぷりに言い、あたしは、今度は本心から謝る。

けっしてふざけているつもりではなかったのだけれど、ひと笑いあったら楽しいかなー、とは思ったわけで、今のは、あたしが悪い。

キッとこちらを睨みつけてくるメルさんに、にへら~と笑ってごまかし、態度を改める。


「ええと、あたしを心配して、ですよね。わざわざありがとうございます。感謝してます」

「そうよ、はじめからそう言ってちょうだい」

「はい……」


そうしているとヤカンがピューと鳴り、インスタントで恐縮なこと極まりないながらもコーヒーを淹れ、ミルクと砂糖も脇に添える。

あたしのぶんのコーヒーもお盆に乗せ、「お待たせしました」と持っていくと、彼女はまず香りを楽しみ、そのままブラックで一口。

優雅にカップを口元に運んだ。


「あら、庶民の味もなかなかね」

「恐縮です」


すると、もう誰もツッコめないセレブ発言をさらりとかまし、今度はミルクも砂糖もたっぷりと入れたコーヒーをご堪能なさった。
 
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