オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
豆ですらない、混ぜれば溶ける粉のインスタントで満足しちゃったよ、このセレブ……と猛烈にツッコミたい衝動に駆られたけれど、言えばまたキッと睨みつけられそうなので、心の中でだけ、思っておくことにしようと思う。
それに話も進まない。
それから早々とコーヒーを飲み干したメルさんは、すっかり気に入ったらしく、2杯目をご所望なさり、もう一杯淹れて差し上げると、いよいよそこからが、本当の本題だった。
「愛菜、あのあと、ずいぶん迷っていたのよ。あなたを1人で帰らせてもいいものか、でも断られたし、って。それでも気になって仕方がなかったのね、店の外まで出て行ってね。しばらく戻ってもこなかったわ」
「そうでしたか……」
だったら追いかけてきてほしかったよ、葉司。
オトコの娘でもなく、男の子でもない中途半端な格好でも、この際、全然構わなかったさ。
「それでね。あたし、もしかしてまことちゃんを追って行ったのかしら、と思って、様子を行ったのよ。そしたら愛菜、スカートの中を惜しげもなく晒しながら、一心不乱にビルの壁に飛び蹴りをしていたの。……ドン引きだったわ」
「あは、ははは……」
失笑、である。