オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
「あら。気づいたようね、愛菜」
「そのようですね、メルさん」
「愛菜、ちょっとこっち!」
奈々とメルさんが顔を見合わせて小さくつぶやきあう中、あたしはそう、声を張り上げる。
2人がそばにいてくれるおかげで、あたしは百人力なのだ、“あのこと”を言うなら、まだ竹山の姿がない今をおいてほかにはない。
そうして愛菜があたしたちのところへ来ると、あたしは1人、すっくと立ち上がり、握っていた拳にぎゅっと力を込める。
何も、今からグーで殴りかかろうというわけではなく、あたし自身に気合いを入れるためであり、勇気を振り絞るための精神統一だ。
「あのね、愛菜」
「うん」
「もう彼女でもなんでもないあたしが言うことじゃないのは分かってるんだけど、どうしても嫌だから、言わせてもらうね。その……竹山、のことなんだけどさ、やめてほ」
けれど。
「やめてほしい」と言い終わる、まさに直前。
「お前、俺の愛菜ちゃんに何してんの」
「ぎゃーっ!! 竹山っ!!」
その竹山がにゅっと現れ、あたしは思わず、女の子らしからぬ悲鳴を上げてしまい、飛び上がった拍子に椅子も倒してしまう。