オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
 
すると……。


「それは違うよ、竹山さん。違う。違うよ」


今まで、竹山とのバトルをおろおろとした様子で見ていた愛菜が静かに口を開き、あたしたちは一斉にそちらに目をやった。

なんで3回も“違う”と言ったのかはよく分からないのだけれど、どうやら愛菜は、あたしをかばってくれる気……? らしい。

「どういうこと?」と怪訝な表情で尋ねる竹山に向き直り、愛菜は真剣な口調で言う。


「マコのことを悪く言うことは、いくら竹山さんでも許せないよ。あたしからフったんじゃないし、付きまとわれてるなんて、それこそありえない。未練があるのは、あたしのほうなの。マコのこと、今でも大好きだもん」

「葉司……」


思わず、本来の名前である“葉司”と言ってしまうと、愛菜はあたしに向けて優しく微笑み、しかしすぐに、竹山にこう言う。


「マコに謝ってもらえますか?」

「……、……。……悪かったよ。……ちんくしゃ」

「ちんくしゃ言うな!!」


叫んだのは、もちろんあたしだ。

けれど、竹山も愛しの愛菜に言われれば弱いらしく、だいぶ間を空けつつも謝ってくれ、これで少しはあたしの気も治まってくる。
 
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