オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
奈々とメルさんが同時に「あ……」と小さく声をもらし、顔を見合わせ、手で口元を覆う。
愛菜とあたしが、本心からではなくとも別れた経緯は、奈々はあたしから、メルさんは愛菜から聞いていて、2人とも、愛菜の“本物の女の子化疑惑”のことは知っていた。
けれど奈々は、それでもあたしの愛菜に対する愛は変わらないと言い、メルさんは、やっぱりちゃんと“ストレート”な男の子だと思う、という見解を、以前、愛菜の様子を見にこっそりカフェへ潜入した際に述べている。
それを忘れていたわけではないと思うけれど、しばらく話題に出ていなかったし、こうも早々と決着がつき、安心しきっていたのだろう。
ここまで来ての急展開に、なかなかどうして、次の言葉が出てこないようだ。
「……ごめんね、マコ。メル、奈々。あたし、やっぱり、自分がどうなりたいのかはっきり答えが出ないと、この先のことは考えられないの」
「大丈夫だよ、愛菜。愛菜は間違ってない」
奈々とメルさんが、そして、話について行けていない竹山が言葉を詰まらせている中、あたしはしっかりと愛菜の目を見据え、そう言う。
どこかで聞いたような台詞だと思えば、葉司に別れさせられた際に言われた台詞そのままで、愛菜と目を合わせ、軽く笑ってしまった。