オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
 
「よかった、ちゃんと来てくれて。せっかくなんだから、前に行って見ようね。……あ、そういえば、ずいぶん名乗り遅れてました、あたし、学園祭実行委員の乾です。2年生」

「いやいや、待ってくださいよ、乾先輩っ。せっかく、ってなんですか? 状況が全く飲み込めていないんですけど、あたし、これから何されるんですか!? 人違いじゃないの!?」


黒山の人だかりをぐいぐいかき分け、前へ前へと進んでいく乾先輩にお尋ねする。

あたしはこの方、こういう場の中心に立ったことなどなく、加えて、生まれてこの方、恋愛事には縁がないまま生きてきたのだ。

もしも仮に告白なんざされようものなら、卒倒どころでは済まされず、汚い話ではあるのだけれど、失禁だってしてしまうかもしれない。


「何を言っちゃってんの。愛を叫ばれるに決まっているじゃない。ある男の子からのたっての希望でね、石田まことちゃん、あなたがいないと何も始まらないのよ。もちろん、人違いでもないからね。そこは安心していいよ」

「えーーーーっ!!!!」


けれど、乾先輩はさらりとそう言い、あたしは人だかりの真ん中で大絶叫をしたのだった。

それは悲しいことに、そのとき上がった歓声によって、見事にかき消される。
 
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