オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
 
「だって、駅でのあれは人として当たり前のことだし、ああいう場でひけらかすことでもないよ。それに、マコは忘れてると思って」


一緒にお昼ご飯を食べよう、と誘われ、初めて葉司と2人きりで過ごしていたお昼休み。

ふと、学園祭の際の告白イベントの話になったあたしたちは、そのときのことを話題にしながら、緊張しつつご飯を口に運んでいた。


「そんなことないよ。ずっとお礼も言えないままだったし、言ってくれたほうが、むしろ合点がいったっていうか。……たぶんあたし、あのとき、恋しちゃったんだと思うんだ」

「ええっ!? じゃあ、もったいぶらずに言ったほうがよかったんだぁ。下手こいた~」

「ぷっ。そうだよ」

「でもさ、恩をエサにマコを釣る、じゃないけど、そういうことはしたくなかったんだよ。別に格好つけたかったわけじゃないよ? ただ、あれだけの人の前だったし、そんな話を聞かされたら、どうしたって断れないでしょ」


そう言われて、あたしは、口に入れたばかりのご飯をモグモグとしながら、しばし考えた。

けれど、どうにも、男の子の考えること、ひいては、葉司の考えることは葉司にしか分からない、という結論に至ってしまう。
 
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