オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
 
「竹山さん、本当に……」

「ああ、ほんっと、マジで悔しいけど!」

「……、……っ」

「でも、人の気持ちばっかりは、ね。だって愛菜ちゃん、いっつも上の空だったし、親父の一件っていうのも初耳だし。さしずめ俺は、愛菜ちゃんとちんくしゃをくっつけるためのサブキャラだった、ってところだろうね」


そう言うと、竹山はふっと笑う。

竹山も竹山で、こうなることが初めから分かった上で、この告白大会に臨んでいたのかもしれない、ふと、そんなふうに思った。

今の言葉が悲観的に聞こえないのも、先攻を取ったのも、また、あたし的に、なのだけれど、さっきの告白にはどこか諦めが混じっていたように感じて、んん? と思っていたのだ。


以前から『ねこみみ。』に通っていて、愛菜に言い寄っていたのは知っているから、竹山が告白の際に“愛菜ちゃん、愛菜ちゃん”と言うのは当たり前であり、分かってはいた。

けれど、本当にそれだけ? オトコの娘のときの愛菜でも、普通の男の子のときの愛菜でも、愛菜そのものが好きなんじゃないの?

なんだか腑に落ちない、しっくりこない竹山の告白を聞いて、あたしはそう思ったのだ。
 
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