オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
そう言い、カツラのかぶり具合をのん気に確かめている愛菜の手を引き、部屋を出る。
出かける支度だけで15分も使ってしまっているため、もう本当にギリギリなのだ。
駅まで走って3分、電車での移動時間が8分、そこから西口のミセドまでダッシュで2分、タイミングよく電車に乗れて計28分で、待ち時間などがあれば、もう間に合わない。
奈々は意外と、そういうところで神経質だったりするものだから、もしも1分でも遅れようものなら、いきなり呼び出したことを棚上げにして「30分で来るって言ったじゃん!」と。
プリプリ怒るに決まっている。
それはあんまりなのではないかと常々思っているのだけれど、いかんせん、マジで怖いため、あたしたちが間に合うほかはない。
……かなり面倒くさい親友である。
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「はぁ、はぁ……。にじゅう、きゅうふん」
「間に合ったみたいだね、マコ」
「ああ、もう、心臓ヤバい……っ」
それから奇跡的にタイミングよく電車に乗れたあたしたちは、約束の時間の1分前に、どうにかミセドにたどり着き、自動ドアをくぐる。
すると、早々に気づいた奈々が、席から立ち上がってあたしたちに大きく手を振った。