オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
 
それからの日常は、まあまあ穏やかなもの、と言っていいのではないかと思う。

奈々は毒づくあたしに嫌な顔ひとつせずにつき合ってくれたし、純平も、葉司から直接聞いたのか、奈々から教えてもらったのか、うまく葉司のことを頼まれてくれているらしかった。

奈々が報告してくれたのだ。

レンタルビデオ店のバイトのほうも、茨城先輩は相変わらず、うざさ120%で絡んでくるものの、それ以外は楽しく、うまくやっている。


こうして、だんだんと普通になっていくのだ。

葉司が元気でいてくれれば、それでいい。

それでいい、のだけれど……。





「ねえ奈々、変。何ですか、これ」

「うん。ちょっと。パジャマパーチーよ」

「……、……は?」


穏やかな日常は、1週間と続かなかった。

その週の週末、金曜日。

泊まりにおいでよ、ということで、奈々の部屋にお邪魔したのだけれど、すでにテーブルの上にはトレンチコートや帽子、サングラスにマスクといったベタな変装グッズが所狭しと並べられており、わけも分からずその前に座らされたあたしは奈々の着せ替え人形と化している。

奈々が何か企んでいるらしい。

……がっぽり謀られたようである。
 
< 74 / 343 >

この作品をシェア

pagetop