オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
 
そして、そう続けた。


「あたしも!あたしもそう思う!」

「奈々ちゃんも? あら、気が合うわね」

「……」


すると奈々がせき込んで話に入ってきて、あたしは苦笑いを浮かべながら、それは違うんじゃないか、と心の中でやっぱり思った。

愛菜がちゃんと“ストレート”な男の子だとしたら、どうしてあのとき「違うよ」ときちんと否定してくれなかったのだろうか。

もしもそれが、あたしに「さようなら」と言わせるための布石だったとしたら、たっぷりと間を取った挙げ句に、ものすごく言いにくそうに言ったのは、全部演技だったというの?

そんな高等な技、葉司は……いや、ここでは愛菜か、は、いつの間に身につけたのだろうか。


「まことちゃん?」

「マコ……?」

「ああ、ごめん。ちょっと考え事」


2人に名前を呼ばれて、ふっと現実に戻る。

奈々もメルさんも、あたしに気を使ってくれてか、愛菜はストレートな男の子だと言ってくれているけれど、女子高生の格好では、なかなかどうして、説得力に欠ける気がするのだ。

突き詰めれば、2人はあくまで他人であり、本物の女の子化願望があるかもしれない、と言われたあたしの気持ちを全部理解できるかどうかといったら、そうではないように思う。
 
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