不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】

…慰撫(いぶ)

夜半、ゴロゴロ…

という突然のけたたましい音に、目が覚めた。

ベッドを飛び起き、カーテンを引いた窓辺に駆け寄る。

カーテンをがばっと開けると、外は激しい雨で空には閃光がいくつも走っていた。

その稲光を見た瞬間、

「キャ―――――」

と叫びながらベッドに駆け戻り、かけものを頭からかぶった。

それからも、その音は鳴りやまなかった。


部屋の外でゴトゴト音がして、ガチャっとドアが開いた。

だれ?

怖くて頭のかけものを取れない。

その気配はこちらに近づいてきているようだった。

でも私は、轟音と光に怯えその場を動けなかった。

ベッドの端が沈んだ感じがした。いよいよ来る!!と思った時

「大丈夫だから。僕が落ち着くまでそばにいてあげるよ」

聞きなれた声がして、頭を優しく撫でられた。


それからしばらくの間、音が小さくなるまでその手は私の頭を撫で続けた。

その掌が…

母親になだめるられているように感じた。

あたりが静かになると彼は頭のかけものを外し、直接頭を撫でてくれた。

彼の掌が、頭を両手で抱えていた私の左手に触れた。

一瞬止まった掌が、薬指のそれを撫でながら

「指輪なんだね…」

とつぶやく。

< 105 / 130 >

この作品をシェア

pagetop