不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】
それは私がもうすでに大希さんのものだという証。

それなのに…

それなのに、彼はそれをゆっくりと愛おしそうに何度も何度も撫でてくれた。

私は、その行為に胸がぎゅっと締め付けられる。

私はもうひとのもの…

あなたのものにはどんなに望んでもなることはできない…


この時だけはと思って私はその指輪を自分で外して、枕元に置いた。

「大希のだよね…」

彼を見上げると、優しい穏やかな目をしていた。

それが当たり前だというような顔。

「うん…

そう」

「子どもはいるの?」

「…男の子一人だけ」

「何歳?」

「…」

「ねえ、何歳なの?」

彼は執拗に子どもの年を尋ねてくる…

何を確かめたいのだろうか?

私の何を知りたいのだろうか?


「もうそんな話…」

「なに?」

「そんな話どうでもいいじゃない!!」



今この時間は私にとっては、現実ではない。

だから、もうこれ以上現実に引き戻されたくない。

私が誰と結婚していようが、何歳の子どもがいようが、

今、目の前にいるのは、あなたと私。

そう、今までどれほどこの場面を望んでも望んでも手に入らなかったか…





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