不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】
「何で?」

「もうそんなことはどうでもいいの。頭撫でてよ。怖いんだから…」

「もう雷止んだよ」

「…怖かったの!それくらいしてくれてもいいでしょ!!

今までず―っとず――っとほったらかしだったんだから!!!」

私は感情的になって叫び散らした。

「ごめん…」

彼は辛そうな表情を浮かべ、黙ったままただ私の頭を撫で続けた。


あの頃もよくこうやって頭を撫でてもらった。

昼休み、大学のそばの彼のアパートでご飯を食べて、昼寝したりした。

抱きしめられて頭を撫でられて…

「ほうちゃんかわいい」

と耳元で囁いてくれた。


夢でずっと会っていた人が目の前に現れた瞬間、堕ちた恋。

不思議な言動も彼の人懐っこさと優しさの前ではさして気にもならなかった。

あの時まさか、その後いなくなるなんて想いもしなかった。

一緒に過ごした幸せな時間はほんのわずかで、いなくなった後の

辛く長い時間は途方もなく果てしなかった…


あの時大希さんがいなかったら、

私はどうなっていたのだろうと考えただけでも恐ろしい。

でも元はと言えばこの人がいてくれたら、

そんなことは考えなくてもよかったんだ。

そう、この人さえ消えなかったら…
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