不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】

…謝罪

そんなことを考えると胸がいっぱいになって、

20年分の何かが込み上げてきた。

私は彼がここにいるという確かなものが唐突にどうしても欲しくなって、

頭を撫でていた手を突然握り締めて止めた。

それからむくっと起き上がって黙ったまま目の前の彼を抱きしめた。

「どうしたの…」

彼は驚きながらも私を優しく抱きしめ返してくれる。

その感触が、その香りが、私を安心させる。

あの時と何も変わっていない。ここに、確かに今は眞人がいる…

「消えないように…

捕まえとくの」

「消える?」

首をかしげるようなしぐさ…

わざとらしい。何をしらばくれているのだろうか?

「あの時…

突然何も言わずに消えたじゃん!!」

「…ごめん」

「自分勝手に…

いなくなったんじゃん!!」

「…ごめん」

彼の声は単調で、詫びているようには感じられなかった…

私はその様子に腹が立ってヒステリックにわめいた。

「つかみどころのない雲だよ。もう…

もう、いなくならないでよ!!!」

「…」


こっちは感情が高ぶって収まりがつかないのに、

肝心なことはやっぱり何も言わない…

何も答えない…
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