不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】
「どうして…」

「…」

「どうしてなの?」

「…」

「なんで何も答えてくれないの…」

「…それは」

戸惑って黙っていた彼の声を聞いた瞬間、それ以上言い訳を聞きたくなくなって…

勢いよく彼の唇に自分の唇を覆いかぶせ塞いだ。

突然近づいた顔。お互いの瞳が激しく絡み合う…

彼の瞳は突然のことに見開いて、心底驚いているようだった。

口の中で声が聞こえたが、それでも私はその言葉を全て飲み込んだ。

もう嫌…

自分が問った事なのにいざとなるとその答えを聞きたくなかった。

もうこれ以上嫌な言葉を耳にしたくなかった…


それなのに触れた唇から、「ほうちゃん、アイシテル」

という言葉が聞こえてきた気がしてしまった…


こうなることを避けていたはずなのに…

こうなることが怖かったのに…

それでも一度彼に触れてしまえば、募る思いは枯れてしまったはずなのに

どこからともなく溢れ出して留まることを知らなかった…

この唇が、私のあの頃の全てを思い出させてしまう。


大希さんは好きだけど…

愛しているけど…

家族も大事なんだけど…

それでも私は、間違いなく今でもこの人が好きなんだ。


< 109 / 130 >

この作品をシェア

pagetop