不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】
僕は目が覚めた。

目が覚める…

覚める?


まさか、何なんだ?

先ほどまでいた場所が現実ではなく、

さっきまで見聞きしたことがまさか夢だなんて…


いや、これは絶対に夢なんかじゃない。それはおそらく…

母の中の記憶なのだろうか?

でもそれだけじゃない?やっぱりわからない・・・

色々なものがないまぜになって…

頭の中がぐちゃぐちゃになった。


目を見開いてもう一度周りを探ると、

隣りには母が僕と手をつないだまま静かに眠っている。

あくまでも表面上はだが…

そのシチュエーションから、僕はたぶん二人で昼寝をしていたのだろう。


穏やかに瞳を閉じて無防備に横たわる母を見ているだけで、

不思議と幸せな気持ちに包まれた。


僕は、どうしてこのひと(母)をこんなに好きなんだろうか?

どうしてこのひとをこんなに深く、愛おしく思うのだろうか?

その時、それは自分の生みの親…

母親なのだからと思っていた。


そっとその頬に手を伸ばしかけて…

一度引っ込めた。

そして、僕の掌を母の頭の方に持っていきその綺麗な黒髪を

ゆっくりと優しく撫でた。

胸いっぱいに温かいものが溢れる。
< 125 / 130 >

この作品をシェア

pagetop