キミと生きた時間【完】

彼は何の目的であたしに声をかけてきたんだろう。


黙っているあたしの隣にやってきた彼は、しばらくの間、何も言わずにただあたしのそばにいた。


用事があるわけではなさそうなのに、ずっとあたしの隣にいる彼が不思議でならない。


その時、さっきまでの柔らかい風とは違い、一瞬吹き付けた強い風。


思わず顔を風の吹く方向から反らした時、ハッとした。


風が彼の髪を揺らし、額に刻まれた5センチほどの傷があらわになった。


「あぁ、これ気になる?」


額の傷に視線を送るあたしに気付いた彼は人差し指と中指でそっと傷に触れた。


わずかな沈黙を破るように彼は困ったような笑みを浮かべた。


「昔やられたらしいんだよね」


「昔……?」


「そう。実の両親に」


「えっ……?」


彼の突然の告白に言葉を失う。
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