キミと生きた時間【完】

「ああ、言い忘れた。アンタに里桜は絶対に渡さない」


ハッと思い出したように振り返り、言い返すこともできずにただ立ち尽くす田中君にそう告げると、宇宙君はあたしの手を引っ張って歩き続けた。


「……――里桜、もう大丈夫だから」


「え?」


「もう大丈夫だ」


あたしの心を溶きほぐしてくれる宇宙君の言葉。


最初の路地を曲がり、田中君が見えない場所まで来ると、宇宙君は立ち止りそっとあたしの頭を撫でた。


大きくて温かいてのひらの熱に心臓がトクンっと震える。


「大丈夫か?」


「うん。大丈夫だよ……」


何とか唇の端を持ち上げて笑うと、宇宙君は眉間にしわをよせた。


「バーカ。辛いなら辛いって言えよ。俺には嘘つくなって言っただろ?」


「宇宙君……」


低くて少しかすれた声。温かい手のひら。


全てを包んでくれるような宇宙君の周りに漂う独特の優しい空気。



「あたし、どうしたらいいのか分かんないよ……」


弱音を口にすると、ポロリと涙がこぼれた。


宇宙君はそっとあたしの体に腕を回して抱きしめてくれる。

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