毒舌に惑わされて
自分の部屋に入り、ネックレスを外そうと手をかける。


「あれ?ない…」


お気に入りのネックレスがあるべき場所にない。


落とした? いや、待てよ…もしかして、聖也の部屋かもしれない。

どうする?

メアドとか聞いてない。聞くつもりもなかったし、もう会うこともないと思った。

でも、あのネックレスはお気に入りだから返してもらいたい。

そういえば、葉月の弟だって言ってた。葉月経由で連絡を取れば何とかなるかな。


「莉乃ー、聞いたわよ」


電話に出た途端、葉月は意味深な言い方をしてきた。


「聞いたって、何を?」


「うちのダーリンが言ってたわよ。聖也と一緒に帰ったって」


「なによ、大輔さん、知ってたの?」


『fantasy』のマスターは大輔といい、葉月の夫だ。

どうやらマスターは酔っている私と聖也のことを見ていたらしい。それなのに、あんな聖也に預けるなんて、ひどい。葉月のところへ運んでくれたら良かったのに。
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